たのしくも悩ましき、春の夢

タカラヅカ、観劇前ランチ、ひとり暮らし

悪いことがしたい良い子でいたいー月組「BADDY(バッディ)ー 悪党(ヤツ)は月からやってくる」感想!

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演出家、上田久美子は天才だと思った

色々すごいんですけど、ロケット(ラインダンス)ひとつだけでも見る価値があった

ロケットというと、研1(けんいち、入団1年目)として初舞台を踏むタカラジェンヌさん達のお披露目としても使われるくらい、〝イノセント〟〝青春〟〝若さ〟というイメージで作られる

毎回必ずタカラヅカの舞台に登場するロケットは、研1生のお披露目でなくても、研1〜せいぜい研5くらいまでの、世代の子達が出演するシーン

〝可愛らしい〟のがロケットである。男役女役の別なく、かわいく、かわいいという記号になっている様にすら見える。それがロケット

それを上田先生は、ひっくり返してみせた

歌詞がすごい

絶対ゆるさない/わたしは怒っている/身体中の細胞が怒っている/こんな気持ち初めて/絶対許さない/…こんな感じ

断固とした表情で真ん中で踊る、トップ娘役ちゃぴ(愛希れいか)演じるグッディを見て、かっけええええという感想しかでてこなかった

振りもラップ調の音楽に合わせて、激しく、格好いい。洋楽ポップのミュージックビデオを連想した。ビヨンセみたいな

普段なら、〝ヤっ☆〟ていうかけ声で、小首をかしげたりして、フィニッシュのロケットだけど、今回のショーでは最後のかけ声は〝絶対逮捕!〟である

正直あっけにとられた。ロケット?これが?ほんとにロケット?

若い=かわいらしい、イノセントみたいな価値観をぶっこわすロケットだと思った。タカラヅカのマンネリ化したロケットの表現だけでなく、世間の価値観にもNOをつきつけているんじゃないかと思うくらい

バッディ(玉城りょう)の悪に触れて、お利口さんだったグッティが初めて醜い感情を覚える、ていうシーンなんだと思った

 

その後、バッディのアジトに乗り込んで行って、炎の中で闘うデュエットダンスへと、ストーリーが繋がっていく

こんなに激しく感情むき出しのデュエットダンスを久々に観た

反発し合いながらも惹かれ合うって、もう何万回繰り返されて来たんだというベタな設定なのに、こんなにも新鮮なのは、ストーリー仕立てのクライマックスだからなのだろうか?

とにかく赤いドレスのグッディが壮絶に美しい。バッディが死ぬほどかっこいい。

2人は一緒に死んでしまうのだけど、悲しくない、これが2人の運命だったんだと思う

お互いの命と価値観をかけて闘って、共に果てたのだと思った

 

で、大階段でパレードが天国、って設定なのも笑った。みんな、なんだかとっても幸せそうだ

冗談じゃねええ!て言って慌ててタバコを取り出して火をつけてご満悦なバッティ

ここ、通常なら最後の挨拶のために大階段に現れたトップスターにピンライトが当たって、心の中でわあああ…てなる毎回おなじみの感動を味わうところ、なんすけど、、

いいの?(笑)

トップスター玉城りょう(たまき りょう)の演じるバッティは悪、という役どころなんだけど、やっていることは喫煙とか強盗とか、タカラヅカの舞台上ではいままで散々表現されて手垢つきまくっている〝悪〟なんですね

お茶目でかわいい、ゆったりとした〝悪〟です。りょう君の持つ大型犬に例えられる、おおらかな感じが上手くマッチして、観ていて楽しいバッティ

え?この演出いいの?てなるところでも、ああこういうのもアリなんだなと思わせてくれるのは、りょう君の力量だと思う

 

2番手、美弥るりか(みや るりか)の演じるスイートハート(名前あるのかな?)

彼はバッディの〝妻〟でした…。でも一途にバッティを想い続けてるわけじゃないの

もっとでんじゃらす☆でセクシーなひとだったら、バッティじゃなくてもいいの

女装もお手の物、なんでもできちゃう女房役、でもいつも自分の中の理想のひとを探し続ける男、それがスイートハート(笑)

なんていうか、冗談みたいな設定なのに、みやちゃんが演じると説得力ある。

ファンタジーな外見から醸し出す、あるある感、ああこういうひといるよね感、がすごいなあと思いました

それを特に何の説明もなく表現しちゃうのだから、このひとはこういうひと、という役作りがきっちり確立している。一本スジが通っているってこういうことなんだなって思いました

フィナーレ銀橋でもトップと2番手が挨拶し合うところで、りょう君に投げキスするし、本舞台に戻ってからも誰かに投げキスしていた。キャラ、ブレないなホント…。

ストーリー仕立てのショーだから、幕が降り切る最後の最後まで、役のままで存在してましたみやちゃん

ガチなファンはちょっとさみしいのかも?でも最高に生き生き舞台上で呼吸されていました

いつもみやちゃんの舞台はそうだと感じるんですけど、みやちゃんがどこかへ行っちゃって、役そのもののお人がそこに居る!て感じがするんですよね

見ていると異次元に引きずり込まれる感、半端ないです

 

月城かなと(つきしろ かなと)君のポッキー巡査、トップコンビ&2番手と4角関係になる美味しい役どころでありながら、フィナーレまでつけてる(男役群舞ではずすけど)おっきなメガネで割をくっている

ビジュアル的にハンデを背負って居るにも関わらず、華やかで美しい。そして笑える

シリアスな役をやると、水も滴るいい男になれるれいこちゃんが、笑われる役どころを演じるってタカラヅカならではの贅沢だなあと思うけど

でもやっぱりもったいない(笑)

個人的にはここまでコメディに振り切らないで欲しかったけど、男役群舞で踊る姿は文句なく美形の麗人でした

悪のバッティに出会って、本当のカッコ良さを知った、やっぱり信念は貫かなきゃ、て言ってアジトを爆破

悪に触れたらから、正義を貫く大事さに気づいた、ていうのがポイントだよなあ

ここはポッキー巡査の最高にイケメンなシーン。そりゃースイートハートも惚れるよ

本当にデンジャラスなのは君だった…!て言ってポッキー巡査の体を抱いてせり下がるスイートハート

もうギャグみたいなんだけど、笑えるんだけど、同時に哀しくて、観ていてそれこそ心ぐちゃぐちゃに、かき乱されました

 

プロローグ、中詰、ロケット、群舞、デュエットダンス、パレードとタカラヅカのお約束をきっちり守った上での、このストーリー仕立てのショー

ポップ&ロックミュージックでいうと、コンセプトアルバムみたいなことを上田先生はやりたかったんだなあと思った。そしてそれは大成功していると思う

大劇場で初日開けて5日目くらいに観た初見では、あまりのぶっ飛び具合に口開けたまま終わったんですけど(笑)

幕が降りたあと客席がしばらくざわざわしていて、こりゃ傑作か失敗作か評価の分かれるところだぞと思ったんですけど

ひと呼吸して今回2回目を見て、ようやく腑に落ちました

これは断固、傑作です

タカラヅカのショーの歴史に残ると思う。タカラヅカのショーの在り方に一石を投じる様な、とても上を向いているショーでした

これを初めてのショーの演出でつくってしまう上田久美子先生は本当にすごいし、勇気あると思いました

タカラヅカのショーで女性の演出家は初めてということで、きっと言いたいことがいっぱいあるんじゃないかと感じました(特にロケット)

おじさん文化を何故かやたらとタカラヅカに持ち込みたがる、石田昌也先生の創るお芝居とセットで上演になっているのが、なんとも皮肉に感じます。うがち過ぎか

 

あと複数回はリピートしたいです

細かい歌詞が覚えられなかったので、よく聴きたい

何より、この世界に浸りに行きたい

全編ポップなコメディタッチのノリで進むんですけど、『悪いことがしたい良い子でいたい』、なんていう歌詞が中詰にさらっと出てきて、ドキドキしました。

人間のサガを描いている、実はテーマは深い作品だと思いました

ウエクミ、最高 

 

 

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