たのしくも悩ましき、春の夢

タカラヅカ、観劇前ランチ、ひとり暮らし

組子は最高に美しくても。ーEl Japón(エル ハポン) -イスパニアのサムライ- 東京宝塚劇場初日ー観劇感想

 

東京宝塚劇場で宙組公演の初日を観てきました。

お正月らしい飾り付けで華やかでした。お着物の方とかもわりといらして、客席も華やいだ感じ。

 

—ネタバレしてますー

 

お芝居作品の感想〜

今日が初見だったのですが、、うーん、これは一体なんなんだ!

 

何て言ったらいいんだろう、色々困った作品でした。

オチはよかったです。最後の10分くらい、最高だった。でもそこに到達するまでの伏線がひどい。何がどうしてこうなった。

テンポが悪くてなかなか話が始まらない感。状況説明とストーリー展開が噛み合ってない感じ。

大抵のお芝居ではまず主人公はどんな人で、その周りにはどんな人がいて、今はどういう状況で、っていうのを紹介してから、お話が始まっていくのだと思うけど…。

ストーリーは単純ですよ。昔、恋人を助けられず死なせてしまった過去を持つ主人公が、海外に渡って自分の生きる場所を見つけるっていう、ただそれだけなんだけど、どうしてこんなにワケワカメな事になっているんだろう?

 

脚本と演出はあれれれでしたが、組子のみんなは本当に素敵でした。

真風くん。本当に大きくて綺麗。ゴテゴテした歌舞伎者っぽい着物のお衣装もなんなく着こなしてしまう、もうこの作品、着物着た美しいマカゼ君を異国の地に置いてみたかっただけなんじゃないの、と思う。

お着物姿の凛々しいマカゼ君とスペインの洋の組み合わせが、ほんっとに美しくてねぇ。お正月からありがたいもの拝ませて頂きました、な気持ちになる。

 

まどかちゃん。喋りだしたとたん、この役はどういう人なのか分かる。貴族階級ではないけれど、聡明で強い女性なんだろうなーとか。

気位が高すぎず、でもトップ娘役のお役にふさわしい〝高嶺の花〟感があって、ものの数秒でそれを表現してしまう、そのさじ加減がすごいなあと思いました。

 

キキちゃん。無駄にカッコイイ。謎めいている俺サマなお役が超お似合い。

でも顔が帽子で隠れちゃっているのは正直もったいないと思う。や、帽子姿がかっこ良いのは確かなんだけどさ、本来オペラなしでも組子の表情が分かる15列目くらいにいても、オペラで覗かないと表情が分からない。

それにキキちゃんの格好良さの無駄使いな感が全体的にする。スペインの人だから、お話がスペインに移るまで出てこられないのは仕方がないけれど、それにしても出番少なすぎ。

キャリアの長い2番手さんなのだし、もっとふさわしいシーンをたくさん作ってよーと思っちゃいました。美味しいのはほとんどラストだけじゃんか。

 

ずんちゃん。なんか前にもこんなお役してなかったっけ、なんだっけ。狂犬みたいなアブなさと、外見の美しさのアンバランスが素敵。

ところで、宙組さん立ち回りが上手いですねー。決闘シーンをダンスとかでなくて、ガチでやっている。全然くわしくないけれど、これって結構すごいことじゃないかなと思った。頑張ってます感がゼロで、やすやすと剣を振り回してる様に見えるのよ、みんな!中のひとはみんな女の子だという事を忘れてしまいます思わず。

 

そらちゃん。まずわたしはそらちゃん大好きなので、出て来ただけでテンション上がります。きゃー。

役どころは主人公の昔の恋人の弟。姉を見捨てた主人公に復讐しようと付け狙っているのね。

暗い目をした、でもワンコみたいな可愛さは無くなってない。

そらちゃんってさ、何もしなくても、少年漫画によくいる、脇で小柄だけど強くてオトコマエ!なキャラっぽいと思う。ビジュアルだけでキュンキュンしちゃいますもう。そのお方が美丈夫なマカゼ氏に殺してやるって襲いかかっているんですわよ、これに萌えずしてナニに萌える(笑)

 

もえこちゃん。マカゼ君のお隣にいるとさすがに大きさが目立たないのだけど、この方も大きくて美しい人です。しかもお役がトップさんの上司か先輩にあたる上級藩士(?)なんですねー。主人公に鷹揚に接するのが板に着いていて、感心してしまう。つい最近まで新公学年だった方に見えない(笑)

もともと大人っぽい持ち味の方ですが、アテガキされてる様にぴったりでした。

 

こうして並べてみると、宙組って上から番手がきっちり整っている感。番手のしばりがあるから、演出がボロボロになったんだろうか?うーん。その辺はよく分からない。

 

演出の変だなーと思ったとこ、思いつくままに列挙

スクリーン使いがあれ?日本とスペインの位置を説明するためだけに、それ映し出す必要ある?

まどかちゃんが最初に登場する時が唐突。あんた誰?ってなった。や、トップ娘役のお役が登場するなり銀橋っていうのは珍しくないんだけれど、それ自体は変じゃないはずなんだけれど、それまでの流れがおかしいから、唐突感がある。

上手花道で宙にむかってマカゼ君と話しているんだけど、なんでこんな演出になっているんだろう。通常は出て来た人物が天の声と話していたら、狂っているか、過去のことを思い出してるとかじゃない?それか本当に神様とか。

でもこれマカゼ君と話しているんだよね。で、直後に実際にマカゼ君出てくる。なんでこんな演出になっているんだろう。お着替えの時間が足らなかった様にしか見えないよ。

マカゼ君が今の心の葛藤を歌い上げる銀橋ってあったっけ?

昔の回想シーンで銀橋を渡っていたけれど…

その銀橋も本舞台も使って大掛かりなわりには、ああそうだったんだ、主人公の過去にはそんな事があったのね、というカタルシスがない。だって昔恋人を死なせてしまったという事はその前のどっかシーンで説明すみだもの。

マカゼ君がなんでスペインに行くことになったのか、よく分からなかった。や、多分主君を狙ったそらちゃんを、マカゼ君は警護役なのに手打ちにできなかった、その罪をつぐなうために、処罰を受けようとしたけど、主君はマカゼ君を好ましく思っていたからできなくて、他の部下の手前海外に追いやるしかなかった、ってことなんだと思うんだけど、多分ね。想像です。想像で補いながら観なければならないから、どうも疲れる。

悪役の設定って難しいんだなあ、じゅんこさんは流石よい仕事をしている。でもあまりに悪役の設定が小物すぎて。ただの地元の有力者でしょ、ちょっと悪どい。

国家転覆を狙っているとかじゃんくて、私服を肥やしたいだけの小物だ。エロ親父だ。だからそれに対峙するまどかちゃんは危機なんだけど…。

現代で言えばパワハラ、セクハラしてくる上司に悩んでる、みたいな話だよなー、て思った。仕事を辞めることもできるけど、辞めたら生活どうしよう、みたいな。

深刻な悩みだよ、そりゃ分かるよ、でもあの美丈夫で超カッコイイマカゼ君が倒す相手としてどーなの。せっかく少女漫画みたいな冒険活劇なんだから、悪役はもっと強そうでカッコ良い方がいいじゃないか。

これ、もしかして最初はじゅんこさんじゃなくて、キキちゃんがやる予定だったんじゃー。そうすれば恋敵にもなるし、まどかちゃんの夫を殺してまで(多分)、彼女を自分のものにしようとする設定が生きてくる。2番手っぽいじゃん。

キキちゃんの実際のお役がとってつけた感が満載なんだよね。登場するの遅いし、本当に活躍するの最後の最後だけだし。

 

ラストシーンから推察するに、このお話のテイストは(昔の)少女漫画風、冒険活劇コメディなんだから、最初からその感じをもっと前面に押し出せばよかったのに。なのに前半に笑えるシーンがあまりない。ないと、作品のテイストが伝わってこないよ。途中まで、真面目な人間ドラマかと思っちゃったじゃない。

確かに通訳なしで日本人とスペイン人が話してる時点であれあれ?と思ったけれど、もっと最初の方で早い段階に、これはファンタジーとして観るものだと、気づかせてくれたらよかった。

 

ストーリー自体は本当に単純なの。でも最後のシーンでカタルシスが得られない。なんでだろう?

ホントに不思議な作品だと思いました。

宙組のみなさんが異国情緒あふれる舞台に美しく映えて、それだけで良いもん見たーな気にさせてもらえる、お話はツッコミどころ満載だけど、妙に心に残る作品でした。

何がドウシテコウナッタ、というのを確かめに、また劇場に通ってしまいそうです。チケ難にはならなそうだし。

そういう意味では良作なのかもしれません。。