行ってきました星組バウホール公演、瀬央ゆりあ初主演の「デビュタント」
初日の感想です!
星組らしいスロースターターな感じもする初日でしたことよ
まずは思う。舞台が暗いよ。マサツカ先生—。音楽もシリアスだ。でも目の前で繰り広げられるのはコメディなのでバランスが悪い
ま、つまりはいつものマサツカ芝居。それをフレッシュな若者たち、つまりは下級生がどう料理するかを楽しむこの公演…。
しっかし天から降って来る主人公イブ君(せおっち)の心の声が多すぎる。その声に合わせて芝居してます感を感じてしまって、落ち着かない
頑張ってみんな〜な気持ちになる
マサツカ芝居ってこんなに、心の声(録音テープ)が多かったっけ?
せおっちのお役は男爵の次男坊、イヴ。次男だから爵位を嗣げるわけでもないので、なんとなく上流階級にすべりこんで、適当に生計を立てている感じの風来坊である
自分が何者になるのか、まだ迷っているモラトリアム真っ最中の若者を、
ギリシャ彫刻の様な直線的な鼻筋、お顔立ちが美しいせおっちが危なげなく演じている
「風はどこから吹くのか」、とかいうくっさいセリフを真顔でいう、イケメン役ではある
ただこの公演は、マサツカコメディなんだよね
キリッとしているとかっこいいが、真面目にキメてるのか笑いをとるためのキメ顔なのか、いまひとつ分かりにくいのである
キメ顔にうっとりしたものか、くすくす笑ったものか、どっちつかずで困った
バウホールのコンパクトな舞台をたった1人のオーラで埋める華は十二分にある。ただストーリーを客席に伝える力はまだ弱いのかな、という印象
客席にこの物語のカラーを伝えたのは、主演のせおっちではなく、ヒロイン経験もあるベテラン娘役のはるこちゃんだった
はるこちゃんはうまい。宝石の盗難に会う、デビュタントボール(若者が社交界にデビューする舞踏会)を開催している貴族の令嬢(?)を演じている。
はるこちゃんの演技で初めて、これはコメディだ笑っていいのだ、と気がつく
わたしの中でMVPは彼女だ。彼女が出ていなかったら、今日のこの公演は笑ってよいものなのか、謎のまましばらく続いたと思う
彼女が客席の笑いを取った後は、これはコメディなんだ、と客席に伝わった感じで、彼女のいない別の場面でも自然に笑いが起こっていた。
これは笑っていい作品ですよーと、少々誇張した表現を、あえてされている…?
それまでの客席の戸惑いったらなかったもんな。や、予習を全然しないわたしが戸惑っていただけかもだけど。
はるこちゃんは、力づくで作品の方向性を表現した感があって、ほんとにお見事でした
そして対象的なのが準ヒロイン(?)の令嬢役、星蘭さん。いつもながら上手くない。上手くないが、出て来るとヒロインだとわかる。彼女の期の文化祭を思い出したよ
あれもマサツカ先生のお芝居だった
彼女はいわゆる娘役2番手さんだったのだが、先に舞台に登場したため、その美貌によりヒロインにしか見えなかったのだ。
後から出てきたヒロインをみて、ああ2番手娘役だったのね、と気がつく始末
そのくらい、突出した美貌だった
しかし持って生まれた美貌のみ突き抜けたまま、技術面では文化祭から全然進歩していない様に見えてしまうのが、ちと苦しい…。
トップ娘役になるなら最低限できなくてはならない、ソロを歌い一人芝居(独白)する、をやっていました
というか彼女が〝演技〟をすると、そういう風に見える、というキャラクターをアテガキしてもらっていました
いわく、内気で自分の世界に引きこもっていて、外に出たこともなくて、世間知らずで…ていう
綺麗なんだけど、いまひとつ何を考えているのか分からない、星蘭さんの舞台上のお姿そのものにぴったりアテガキしたお役でした
家出して、イブ(せおっち)の元に押しかける淡々としたマイペースのセリフまわしがまた可笑しくて、笑いを取れていました
というか、これは脚本の、アテガキの勝利という気もしますが
星蘭さんは仮面をつけたコロスを背負って、ソロを歌い一人芝居をするのだけど、(ここでそれまでどんな人かわからなかった彼女の人となりがわかる仕掛け)
超音波か棒読みのまま歌っているので、なんというか、「そっ…その芝居はそれでいいのか?」という気にさせられた。
令嬢の彼女なりに精神的に追い詰められている、という場面だからそんなに変ではないのかもしれませんが、、、
観ているいるこっちはおっかなびっくりで、指の隙間から見てしまうというか。ああ綺麗なのに、こんなに美貌に恵まれているのに、見ていていたたまれない。。
心からうっとり楽しめない
でも現トップ娘役のあーちゃんにしろ、前トップ娘役のねねさまにしろ、あるいは檀れい様にしろ、トップになったのは遅かった。
彼女たちは新公学年をたっぷり使って、7年目くらいにトップになったのでした。
だから、星蘭さんもあと数年かければ、だ、大丈夫…と思う!
ていうか、思いたい
星蘭さんはどうみても、次期(かその次?)にトップ娘役になるために大切に育てられる感が今までもあったけど、ここにきてお役のミレーユと同じ様に荒療治、大役をまかせてみました感
頼む、育ってくれー。うららちゃんの二の舞はもう見たくない
ちなみにデュエットダンスは、腐れ縁彼女役の桜庭舞さんと、星蘭さんとせおっちのトリオでした
太陽王?
その星蘭さんがヒロインをやりきる実力が(まだ)ないためか、腐れ縁っぽい恋人役がいる。イブ(せおっち)は彼女の事を好きというより、積極的な彼女をなんとなく拒めないでいるといった感じ。彼女は想い人にツレなくされても怒らない、〝なんでも分かっている〟男には都合のいい彼女なんだろうなあと思わせる、桜庭舞さんのナタリー。
タカラジェンヌの持ち味って不思議だ
すぐ前の本公演のショー、キラールージュでの、ステッキ持った妖精さん☆の方が、今思えば似合っていた
公演中はそのアニメ声とぶりっこぶりに、お、おう…て気になったもんだが、今回の桜庭さんのお役は〝酸いも甘いもかみ分けた〟いい女、自分で事業を起こそうとする自立心あふれたかっこいい女である。せおっちの煮え切らない態度にも怒らない
アイドル風味のナゾの妖精さん☆はハマっていたのに、こういういい女役をやると色気がなくなるのが不思議だ。ポンポンしゃべるのが、かさついてガサツに見えてしまうのがもったいない
歌も意外に思うくらい、うまくない。こういう役は、彼女を一番光らせるお役ではないのだろうなあ
琴ちゃんオオカミさんの舞台下手で歌っていた妖精さんは本当に歌ウマさんだったんだけどな
イヴ(せおっち)の親友ビュレット君のしどりゅー君。見事に支え役。多分上げたいのは極美くんの方。しどりゅー君はソロもなくてそこは切なかった。しどりゅーに歌わせたってくれー
歌い出そうとして、〝そういうのはいい〟とイヴに言われてしまう、メタな笑いが地味にキツイ
一応2番手だろう?この公演の。歌わせたってくれよー。よよよ
ビュレットはいなくてもストーリー展開に支障はない(しょぼん)が、この役がないと話がころがらない、というおいしいお役の極美真くん。ソロはないものの、脇役ではない刑事さん。主人公に「俺と似ている」と言わしめる、いわゆる心友役(ココロの友と書いて心友☆ね)
ソロはないけれど、これが大劇場で本公演なら、このお役を若くして2番手になりました、みたいなスターさんがやってもおかしくなさそうだ
新人公演主演をした経験というのは、大きいのだなあ
破綻なく、このお役をこなしていた感がありました
水乃ゆりちゃんのニコール。2番手のしどりゅーの相手役だから、娘役2番手なはず(?)なのだけど、とくにフレッシュさはない。ほとんど初めて彼女の演技をじっくり見た気がするのだけど、安定しているなーという印象しかなかった
ふつーにうまい
星蘭さんみたいに、びっくりするくらいの拙さがないから、かえって記憶に残らない。舞台って理不尽だな
しっかりものの彼女を自然に演じておられました
あと印象に残ったのは、MVPその2だと思う!この人、天路そら君。はるこちゃんの執事ラサール役。妙にどもるお役で、笑いを取っていました。
どもる彼に、せおっちがきれてさらに笑いが追加される、みたいな現象が起きていた
最初に笑いの口火を切った(?)のはあまじいだったかも
ああ、笑うところがあった…!と嬉しくなったの覚えている
余談だが、今東宝でやっている花組はいい芝居なんだけれど、笑いがほとんど無くて個人的には辛かった。なんていうか、いわゆるヌケ感がないと、1時間半の舞台を見続けるのって辛いんだよねえ
すらっと長身の執事で、硬い雰囲気で、最初あまじいだと気がつかなかった。(予習なしで観劇)
舞台姿のカラーまで変えてしまうの、すごい芸達者だなあ
以上、ざっくり感想でした
もうバウのために遠征は何度もできないから、初日にして見納めです
無駄に熱い(はず)の客席も今日はどこか大人しめ。初主演のバウなのに、カーテンコールは普通に3回。スタンドアップはしないまま終わっちゃいました。あれれ…?
せおっちのファンは割と大人な方が多いのかしらん?
それともマサツカ芝居に正直、げんなりしている人が多い…のか?(笑)
ご挨拶は、はるこちゃん。デビュタント・ボールの意味について解説、いわく成人した若者の舞踏会という意味、フレッシュな瀬央ゆりあにぴったりの作品をマサツカ先生が書き下ろしてくださいました、的なことをおっしゃっていました
そしてせおっちご挨拶
本日は誠にありがとうございました、とおっしゃっているのが記憶に残りました
本日は本当にありがとうございました、ていうのが定番になっているから、誠にって言う人が気になる。みっちゃんさんもそうだったなあ
誠に、が世間的には正しいのでしょうけど
今日1日が終わりそうでほっとしています、で客席から笑いが
カーテンコールは大人しめでも、やっぱり初主演のせおっちを皆んなで見守る感があって、ああタカラヅカだなあと思いました
行ってよかったです!