2020/01/02ワンスアポンアインアメリカ2回目11公演観劇
さすがに2日目は元旦と違って、並び方も穏やかでしたよ。5時半に行って折り返しくらいでした。立ち見の14番。1階席(脇のあのバルコニーっぽいとこ)と2階席でしたがS席も出てました。
ーネタバレしてますー
観劇2回目もトップコンビの演じるカップルが切なくて、本当に素敵なのが一番印象的です。
きーちゃんのデボラ。彼女が強く格好よくなっていくのをみているのが楽しい。
子供の頃はスターになってどこかの王子様にプロポーズされたい〜なんて言っていたのに、ヌードルスが監獄から戻ってきた頃には、「ショービズの皇后になる夢は捨ててないわ」って誇り高く言っている。王子様に見初められるのではなくて、実力と努力でショービズの頂点に立ちたい、って夢が変化しているんだ。すごく現代的なヒロインで、嬉しくなる。
でもヌードルスにはその変化が分かっているのかなって、1幕最後のバラを敷き詰めまくった部屋に案内するところで思う。まるで彼女が贅沢な暮らしを望んでいるだけだと誤解している様に見える。バラの花びらを散らしまくった部屋ですよ。ヅカ的に超美しいけれど、ちょっと引くよふつー。いや、昔の約束通りのことをしたというのはわかるんだけどさ。
そんな風にしか自分をアピールできないヌードルスが哀しい。デボラが望んでいることはそんなことじゃない。彼女は贅沢がしたいんじゃない。自分の力と努力で、吹き溜まりの様な暮らしから抜け出して、もっと高みに登りつめたいんだ。ヌードルスにはそんな自分の健全な野心を、昔の様に認めて、理解して、応援して欲しいんだよ。そして彼には自分の様にまっとうな努力で成功して欲しいんだ。
ヌードルスはどうすればよかったんだろう、〝陽の当たる場所〟だけど、大きな成功は望めない、まっとうなカタギの仕事をしながら、スター街道まっしぐらの彼女を横で見守っていれば良かったんだろうか?
でも彼の夢は皇帝になることだ。
当時のユダヤ系移民が置かれた環境がどのくらい社会的に不利だったのか分からない。全然知らないけど、まっとうな職で成功を納めたユダヤ人だっていただろうと思う。でもヌードルスにはできなかった。犯罪が彼の唯一身につけた教養だったから。
でかく稼ぐには、スターになったデボラちゃんにふさわしい経済力と成功を納めるには、裏稼業に手を染め続けるしかなかった。
そもそも堅気でコツコツなんて、そんなのヌードルスらしくない。だいたい、デボラちゃんもそんなヌードルスだから惹かれたんだと思う。だって、優しくそばで見守る男は他にいる。あやなちゃんのニックだ。彼は一見デボラにぴったりの男に見える。音楽の才能があって、デボラの良き理解者で、仕事のパートナーだ。でも2人は男と女というより、まるで兄弟の様な雰囲気で仲良しなんだよね。2人で手を取り合ってはしゃぐシーンは本当に微笑ましい。ニックはデボラに気がある様に見えるけれど、彼女はニックを男として見てない感じ。
やっぱりヌードルスは何かやらかしそうな、危険な香りのする男だから、だからデボラは惹かれたんだと思う。ヌードルスのヌードルスらしさに彼女は惚れたんだと思った。
ヌードルスは、いまや成功してブロードウェイのスターになった彼女は星で、務所帰りの俺は石ころだって歌う。デボラへの想いを歌うだいもんのヌードルスが一番重くずっしり心にのこった。俺は石ころだけど、それでも生きて想いを遂げたいんだって歌う。
この銀橋がなかったとしたら、だいぶ違う印象になったに違いない。バラの花を敷き詰めた部屋みたいな贅沢にこだわる、馬鹿なヌードルスに同情できなくなっていたかもしれないと思う。
銀橋を渡るだいもんのヌードルスの周りだけ、彼の激情で重力が重くなった様な、すごい磁場が発生しているみたいな、重く、重く、暗い空気。
なんかすごかった。すごいしか言えない。語彙力がどっかいく(笑)
ところで、だいもんが銀鏡を渡る途中で、スーツの上着のボタンを外すのがすごく印象に残っているんだけど、あの男性が座るときとかによくやる仕草。初日と今日とでは外すタイミングが違っていたなあ。何か意味があるのだろうか?
他の人の感想も少し。
さきなちゃんのマックス。キレ系のお役。なんでこの人が、しょう君の切れ者ジミーの後押しがあったとはいえ、数十年もまともに政治家ができたのかそこは謎なんだけど、キレてアブない役はお手の物、と行った感じ。ひかりふるのダントンとか、凱旋門のアンリとか、そっち系のさきなちゃんです今回。20世紀号の様な可愛いさきなちゃんが見たいんだけども、、仕方がない。本当に足が長くて美しいスーツ姿を眺めているだけでも眼福です。これはこれで美味しくいただきます。前にも見た様なお役だからか、安心して観ていられます。
話題のあーさの女役キャロル。可愛い。最初髪型からマリリンモンローみたいな感じかと思ったけど違う。もっと理知的でチャーミング。いわゆる惚れた女の可愛さ、みたいなのを楽しそうに演っているのが、みていてわくわく。
それに、しょっちゅう場面と場面のつなぎの様に出てくるから、コケティッシュで美味しいお役だと思う。ちゃんとプロローグとそしてもちろんフィナーレには男役で出てきてくれるし、ファンの気持ちも組んでいる。
普段タカラヅカを観ない人が観ていてアレが、あのアブなそうなイケイケ男子がさっきのチャーミングな美女と同一人物とはわかるまい。いや、わかるのかなあ、あーさってすごく美人だよね(←いまさら)なんかパッってどこにいるのか分かる、オペラなしでも立ち見席から顔立ちが割れる濃ゆい美人さんで、その美女が歌って踊っているのを見るだけで眼福(再)
でもわたし、このさきちゃんマックスとあーさキャロルのカップルになんかキュンと来ないのよねー。幸せラブラブじゃないからかなあ。マックスはしょちゅうキャロルを殴っている印象しかないし。や、まだ2回しか観てないから色々脇で演っているのかもしれませんが、もうちょっと楽しそうにしている2人が観たいなーってこれは演出の問題ですね。
そう演出!トイレに並んでいて聞こえてくる会話が、〝お金かかってないねー〟でウケた。みんな思うことは一緒ね。
イケコらしい、ボンとセリぐるぐるしまくり感がない。ていうか派手さは皆無です、この作品。なにも冠ついてないからかなあ。
目新しかったのは1幕最後の大量のバラと黒ネクタイ外しだいもんさん、この破壊力はすさまじかったですよ。はい。幕が降りたらどよどよーって(笑)もうみんなコーフンしすぎで面白かった。心の中でめっちゃ同意。だいもんやばい。
それ以外で印象的だったのって、あまりないかも。プロローグなんかは男役をずらーっと並べて壮観だったけれど、それって役者(男役)の魅力だのみ、って感じもしたしなあ。そりゃファン的にはきゃーですよ。テンション上がりますよ。嬉しいですよ。でもいけこといえばプロローグすごい、なイメージだから、ただ男役を並ばせただけの感じもする演出にちょっと拍子抜けしたというか。
労働者のストはスカピンの市民のシーンぽかったし、エリザベートのミルクの様に、モブが一列に並んで〝民衆の声なき声〟を歌うのも、あーはいはいと言った感じで。
でもわりと好きだと思ったのは、〝ブロードウェイ〟で成功したデボラが歌うシーン。〝〟が着いているのは、ブロードウェイじゃなくて、これがまんまタカラヅカだから。ちっともブロードウェイの舞台に似せようとしてないのよ、ザ・タカラヅカって感じ。これって、お金がなかったんじゃなくてきっとわざとだと感じた。
演出自体は「1789」のアントワネットの登場シーンと同じで、大階段いっぱいに広がるスカートと真ん中で歌うヒロイン、なんだけど「1789」はちゃんと宮廷っぽく見えた。これは宮廷のパロディですよ、って感じに。
でも今回はそうじゃなくて、ブロードウェイのバロティじゃなくって、タカラヅカの舞台に見えた。
そしてきーちゃんのデボラが歌うのが、ウロ覚えで申し訳ないのだけど、〝不景気はいつまでも続かない、今はひとときの夢をわたしとみましょう〟みたいな感じ。これ、タカラヅカとタカラヅカを観に来る私たちのことをかけて歌っているのかなあ、と深読みかもしれないけれど、そう思いました。
今もえんえんと不景気だし、明るい話題はとりあえずオリンピックくらい?人口は減るし、年金は制度が持つのか微妙だし…みたいな、現実世界のバブルはじけてずーっっと元気ない日本と、舞台上の恐慌後の暗い時代のアメリカを重ねているのかなあ、と思いました。きーちゃんのソプラノで悪いことはいつまでも続かない、なんて歌われると、そうかもなあ、って気になりました。ありがたいボイスです。きーちゃんの歌声はマジ天使。
まだもっといっぱい感想はあるのだけど、今一番また観たいと思わせてくれるのは、やっぱりトップコンビ演じるヌードルスとデボラのカップルでした。村にはもう行けそうにないから、東京まで待つのが辛いなあ。青春18きっぷって通年で売ってくれないかしら(←笑)
東京に来たらまた舞台が深まっていそうで、とっても楽しみです。